登山を始めるとき、靴とザックとカッパは調べればすぐ分かる。でも意外と困るのが、その「すきま」を埋める小物のほう。この記事では、そのすきまの小物にしぼって、毎回ザックに入れてる物を優先順位で紹介
世の中には「小物13選」「25選」みたいなまとめがたくさんある。だからここでは軸を変えて、日帰りで毎回持つ優先順位と、自腹で使ってきた正直な感想だけで選んでみた。毎回入れてる6種と、山や季節で足す条件付き3種で、合わせて9種類(ヘッドランプは2灯なので、モノとしては計10点)
書いてるのは、6年かけて日本百名山100座を完登したハイカー(運営者プロフィール)。北海道から九州まで、実際に使ってきた物だけを並べてる。なかには、羅臼岳で救助に関わって考えが変わった物も。靴・ザック・カッパみたいな本体装備は、別記事に
先にひとつ大事なこと。この記事は「小物」の話です。靴・ザック・レインウェア・水・行動食・防寒着・地図(とアプリ)・登山計画の提出といった基本は、これとは別に必ず必要。小物だけそろえても安全に山には登れないので、本体装備は別記事と合わせて読んでほしい。
この記事でわかること
- 対象読者:これから登山を始める人・日帰り低山の小物選びで迷っている人
- 結論:毎回持つ6種+条件付き3種(9種類・計10点)。命を守る優先度の高い順に、少しずつそろえればいい
- 根拠:6年で日本百名山100座を完登し、毎回ザックに入れてきた小物を自腹でレビュー
- 所要時間:読むだけなら約8分。まず優先度の高い安全の基本から始めれば、その日のうちに一歩目がそろう
先に結論|買う順番は「命を守る優先度」で
「登山の小物って、一式でいくらかかるの?」ってよく聞かれる。でも正直、最初から全部そろえた人なんて、周りにもそういない。大事なのは順番で、安さじゃなく「命に関わる度合い」で優先度を決めるのがいいと思う。これが100座歩いた今の結論
買う順番は「命を守る優先度」で
- 初回の登山までに:ヘッドランプ+予備電源・応急処置セット・エマージェンシーシート(SOL)・ホイッスル
- 次に足す:スマホの使用量に合ったモバイルバッテリー・救難ミラー
- 山域や条件で足す:携帯浄水器・消音熊鈴・お尻マット
照明・応急手当・保温用の緊急装備は、日帰りでも「もしも」に備える基本の安全装備。だから安さではなく、最後まで安全に関わる度合いで順番を通す。条件付きの物は、必要になってから足せばいい。
紹介する9種類(計10点)の全体像は、この表のとおり
| 小物 | 分類 | 選ぶ条件 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| ヘッドランプ(2灯) | 毎回持つ | 充電式・明るさ・赤色モード | ★★★ 最初に |
| 応急処置セット | 毎回持つ | ガーゼ・テープ等の基本品/薬は個別判断 | ★★★ 早めに |
| SOLサバイバルシート | 毎回持つ | 軽さ・封の確実さ | ★★★ 早めに |
| ホイッスル | 毎回持つ | △ 音量・耐久・濡れに強い物 | ★★★ すぐに |
| モバイルバッテリー | 毎回持つ | スマホ消費・コース時間で | ★★☆ 次に |
| 救難ミラー | 毎回持つ | △ 専用品を推奨・要練習 | ★★☆ 次に |
| 携帯浄水器 Sawyer MINI | 条件付き | 無雪期・水源を選ぶ | ★★☆ 水場・緊急用 |
| 消音熊鈴 | 条件付き | 消音機能で選ぶ | ★☆☆ クマ生息域 |
| お尻マット | 条件付き | 100均で十分 | ★☆☆ 快適性 |
私が毎回持つ小物|命に関わる6つ
まずは、山域や季節を問わず毎回ザックに入れてる6つ。「どこの山でも、これだけは」って言える土台の小物
ヘッドランプは2灯運用|頭と首で「遠く」と「足元」を分ける

ヘッドランプは、頭と首から2つ同時に使ってる。予備の意味もあるけど、本当のねらいはそこじゃなくて、車のハイビームとロービームみたいに、頭のライトで遠くを、首のライトで手元と足元を照らすと、暗い下山路の見え方が変わる。1灯で全部やろうとすると、遠くを照らせば足元が暗いし、足元を照らせば先が見えない。2灯なら、両方いける
頭に着けてるのはZEXUS ZX-R40。赤色LEDに切り替えられるから山小屋で眩しくならないし、専用クリップで帽子のツバにも留められる。首側はモンベルの電池式で、たぶん今の現行品にはもうないやつ。だから型番はそんなに気にしなくてよくて、これから買うなら「充電式・明るさ・赤色モード」の3つで選べば十分だと思う。モバイルバッテリーを持ち歩くなら充電式が扱いやすいし、赤色モードは早出のとき小屋で人に迷惑をかけないための便利な機能
それと、この2灯はあえて電源の種類を分けてる。頭のZEXUSが充電式、首のモンベルが乾電池式。地味だけどこれが効いていて、片方の電池が尽きても、もう片方は別系統だから生き残る。同じ充電式を2つ持つより、「両方いっぺんに真っ暗」を避けやすい。
正直な欠点も一つ。かなり早出して点灯時間が長い日は、最大の明るさで使い続けると電池が切れることがある。そういう時は、日の出のタイミングで明るさを落とすか、モバイルバッテリーから給電してしのいでる。あと、2つとも点けっぱなしだと予備がなくなるから、明るさが要らない場面ではどっちか一方を消して、非常用に残すようにしてる。もちろん、まずは1つ揃えるところから。
モバイルバッテリー|通信・地図・照明を切らさない予備電源

今使ってるのはCIOのSMARTCOBY TRIO、20000mAh。これで2台目。山でのスマホって、地図アプリ・緊急連絡・ヘッドランプの予備電源まで支える大事な道具。それが電池切れで止まると、一気に困る。だから、通信と地図と照明を切らさないための予備電源として、モバイルバッテリーは重視してる。もちろん機内モードで節電する方法もあるけど、YAMAPやヤマレコのアプリの通信まで切れてしまうので、遭難時に自分の居場所を知らせる位置情報の共有サービスまで止まってしまうリスクもある。だからあえて機内モードにせずに予備バッテリーを持ち歩いて通常モードで使ってる。
とはいえ、必要な容量は人それぞれ。コースの行動時間・スマホの電池のもち・許せる重さで決めればいいと思う。20000mAhは余裕がある反面、正直ずっしり重いのが欠点。省電力な端末や短い行動時間なら、もっと小さくても足りるはず。長めの行動時間に合わせて大きめ、っていう一例として見てもらえたら
ちなみに、行動中にスマホを落とさない工夫(ストラップ穴つきケースの選び方や、落下防止のテザーとか)は、このシリーズの第4弾「スマホ電源」でくわしく扱う予定
SOLサバイバルシート|「羅臼岳の一枚」が背中を押す

エマージェンシーシートは、体温の低下を防ぐための備え。羅臼岳で救助の現場に立ち会った時の記憶が、いまだに背中を押してくる。「軽いし、いざって時にこれ一枚あるかないか」で迷わず入れる。使わずに下山できるのが一番だけど、持ってない不安のほうがずっと重い。低体温って状況次第でどう転ぶか分からないからこそ、保険として忍ばせてる
ひとつだけ注意書き。一度開けると、畳んで元に戻すのが至難の業。まあ、うまく畳めなかったらジップロックにでも入れておけばいいだけだから、そんなに気にしなくて大丈夫
ホイッスル|声より遠くまで届く
声はすぐ枯れるし、風で消えちゃう。その点ホイッスルなら、少ない息で遠くまで届く。LIFE SYSTEMSみたいな笛を一つ、ザックのショルダーにつけておけば、いざって時にすぐ吹ける。軽いし、つけない理由がない
ただ、弱点もある。強風だと音が流されるし、濡れたり凍ったりすると鳴りが鈍る笛もある。だから選ぶなら、大きな音が出て、濡れても鳴る樹脂製がいい(金属製は結露で口が張りつくことがある)。値段だけで決めずに、音の大きさ・濡れても鳴るか・壊れにくいか、このあたりは見ておきたいところ
応急処置セット|すり傷・靴擦れの手当に
※薬の選択は、持病・体質・併用薬によって異なります。自分用として準備していますが、この記事では特定の医薬品を推奨しません。使用前に添付文書を確認し、不安がある場合は医師や薬剤師に相談してください。

低山でも、ほぼ必ず持っていくのがこの応急処置セット。中身は滅菌ガーゼや紙テープなど、すり傷・靴擦れの手当に使う基本の物。あとは市販の痛み止めや経口補水品、足の攣り対策の品なんかも同じ常備袋にまとめてるけど、これはあくまで私の携行例。薬の選び方は持病や体質でも変わるから、この記事で特定の品をすすめることはしないでおく。使う前に添付文書は確認してほしい(飲み物系は凍る雪山では分けてる)
ひとつ限界も。応急処置セットは、あくまで「その場をしのぐ」ための物。ひどい出血や骨折の疑いなんかは、自分で手当てするより下山や救助要請を優先すべき場面もある。持ってるからって過信しないのが、いちばん大事かなと思う
救難ミラー|「持っていたのに使えなかった」正直な話

小さな二つ折りの鏡。日焼け止めを塗る時にも使うけど、本当のねらいは救助のシグナル。羅臼岳で救助に関わった時、ヘリに向かってポールを振っても上空からは意外と分からなくて、タオルを振るか、鏡の太陽光を反射させたほうが見えやすいって、その場で聞いて知った
ただ、正直に言うと。あの時、ミラーは持ってたのに、とっさの場面では使うことをすっかり忘れてた。道具って持ってるだけじゃ足りなくて、いざって時に手が動くかどうかは、やっぱり経験がいるんだと思う。頭で分かってても、実際の場面では動けなかった。それでも「持ってれば選択肢にはなる」から、軽い鏡を一つザックに入れてる。
選ぶなら一点だけ。ふつうのコンパクトミラーでも反射はできるけど、とっさにヘリへ光を当てるのは照準が難しいし、割れやすさもある。救助のシグナルを重視するなら、照準用の穴が空いた専用シグナルミラーのほうが確実。ただし、晴れた日中しか使えないし、事前の練習も必要。私自身が「持ってても使えなかった」側だから、一度くらいは光を当てて試しておくのをおすすめしたい
山と季節で足す小物|条件付きの3つ
ここからは、登る山や季節で必要度が変わる3つ。「全員必須」じゃないので、ご自身の登り方に当てはめて選んで下さい。
携帯浄水器 Sawyer MINI|その場の水を、緊急用に飲む

Sawyer MINI(0.1ミクロン)は、ペットボトルに直結できる浄水器。水が尽きた時や補給できなかった時に、その場の水を濾して飲むための緊急用って位置づけ。ふだんの行動用というより「万一の保険」として持ってる感じ
ただ、万能じゃない。メーカーが除去対象に挙げてるのは細菌・原生動物・マイクロプラスチックで、ウイルス、塩分、溶け込んだ化学物質や重金属までは除去できない。だから生活排水・鉱山・農薬・動物の死骸なんかの汚染が疑わしい水源は避ける、っていう水源選びが前提になる。それと、一度使ったフィルターは完全には乾かないから、凍結した可能性があれば内部の損傷が外から分からず、使用をやめて交換するのがメーカー推奨(除去できる物・できない物や凍結時の扱いはSawyer公式のとおり)。あと自腹の実感として、使ったあとは逆洗みたいな手入れが必要だし、濁った水を通すと流量が落ちやすいのも欠点。それでも「いざって時に水が作れる」安心感は、重さ以上の価値がある。だから今も、手放せずザックに忍ばせている。
消音熊鈴|九州では、持っていかない

熊鈴は、森の鈴のカバー付きBEAR BELL(パールブルー)を使ってる。正直、他の熊鈴よりずっしり重いのが欠点。それでも使い続けてるのは、消音が効くから。歩きながらでも、ザックの後ろに手を伸ばして引っ張ればカバーがかぶさって音が止まる。山小屋や休憩地みたいな「鳴らしたくない場面」でサッと黙らせられる。この一点だけで、重さより便利さを優先した一品
面白いのは、九州の山では持っていかないこと。環境省は九州地方のツキノワグマを絶滅と評価してるので、九州ではふだん携行しない。ただ、「熊がいない」と言い切れるのは今のところ九州くらい。四国にも剣山山系にごく少数だけど生息していて(環境省の調査で毎年確認されてる)、九州以外はクマの生息域と考えて持つようにしてる。気をつけたいのは、熊鈴は「鳴らせば絶対安心」って道具じゃないこと。出発前に、登る山の自治体や登山口の最新の出没情報は必ず確認してほしい。住んでる地域と行き先で装備が変わる、いい例だなと思う
お尻マット|休憩の質が、一段上がる
100均で買える、お尻の下に敷く折りたたみマット。これが休憩の質を一段上げてくれる。地面や岩、濡れたベンチに座る時でも、これ一枚あるだけで快適さが段違い。軽くてザックの外にも付けられるし、100均だから失くしても痛くないし。地味な道具だけど、あるとないとじゃ休憩の心地よさがまるで違う。欠点は、薄いから尖った岩の上だとクッションが足りないこと。あくまで「冷えと濡れを防ぐ」道具、くらいに割り切るのがちょうどいい
こんな人には、これ|シチュエーション別
同じ初心者でも、登る山によってそろえる順番は変わる。迷ったら、下の目安でどうぞ
- これから始める人:まずヘッドランプ+予備電源・応急処置セット・SOLシート・ホイッスル。次にスマホに合ったモバイルバッテリーと専用シグナルミラー。お尻マットのような快適系は余裕が出てから
- 日帰り低山が中心:上の基本装備に加え、コース時間とスマホの消費量に合ったモバイルバッテリー。日が短い季節は2灯運用が安心
- クマの生息域へ行く人:消音熊鈴を追加(入山前に出没情報の確認を)。水場の不安がある縦走ならSawyer MINIも
私はどうしているか
100座を歩いた今の結論は、「一度に全部そろえない」こと。命を守る優先度の高い順に少しずつ足していけば、最初の出費のハードルは下がるし、本当に要る物だけが手元に残る。ザックにいつも入ってるのは、この記事で毎回持つって挙げた6種。浄水器や熊鈴は、行く山に合わせて足す。これが、100座の答え
よくある質問
まとめ
初心者の日帰り小物、私の結論
- 毎回持つ6種(ヘッドランプ・モバイルバッテリー・応急処置セット・SOLシート・ホイッスル・救難ミラー)
- 山と季節で足す条件付き3種(浄水器・消音熊鈴・お尻マット)
- 合わせて9種類・モノとしては計10点。買う順番は命を守る優先度で、一度に全部は要らない
次に読む
小物の全体像がつかめたら、次は「装備の本体」へ。100座を歩いて最後まで残った登山装備は、別記事にまとめてあるよ
- 日本百名山100座を歩いて残った登山装備・ギア10選(靴・ザック・レインウェアなど本体装備)
- 山で電波を切らさない通信術(モバイルバッテリーと合わせて読みたい命綱の話)
なお、このシリーズは「#2 夏対策」「#3 水筒・給水」「#4 スマホ電源」「#5 パッキング」と順に公開していく予定。調理・火器系(ストーブやクッカー、ガス缶の重量管理術とか)も、別記事でくわしく紹介する予定
小物って一つひとつは地味だけど、「いざ」の場面で効くのは案外こういう物。次の一歩を、少し身軽に踏み出してもらえたら何よりです。

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