先に結論:登山にパルスオキシメーターは要る?
3,000m級の山に行くなら、持っていて損はないです。
ただ、最初にお伝えしておきたいことがあります。これは「高山病を防ぐ道具」ではありません。正しくは、「自分が無理をしていないかを、数字で確認するための判断材料」。小さくて軽くて、荷物になることもないです。
- 3,000m級の山に行くなら:持っていて損はない
- 役割:高山病の予防ではなく、無理をしていないかを客観的に確認する
- 重さ:約23〜29g(一般的な医療機器認証品)
- 注意:数値が低くても、症状がなければ安心・・というわけでもありません
富士山で実際に使って、SpO2(血中酸素飽和度)が79まで落ちた記録があります。その体験をもとに、使い方・選び方・数値の見方まで書いていきます。
富士山で使った実体験:SpO2 92→79の記録
2022年7月、富士山を日帰りで周回しました。富士宮ルートで登って、お鉢巡りをして、御殿場ルートの大砂走りで下り、最後に宝永山を経由するルートです。標高3,000mを超えたあたりから、頭が重くなって、足が前に出にくくなってきました。
オキシメーターで測ってみると、SpO2は92。平地での自分の値は97〜98くらいなので、かなり下がっています。

その後、山頂付近でもう一度測ると、79まで下がっていました。数字で見ると、さすがにドキッとします。でも不思議なもので、フラフラする感覚はあるのに、数値を見た瞬間に「あ、そういうことか」と、少し冷静になれました。パニックにならずに済んだのは、この数字のおかげでもあったと思っています。

使い方は、休憩のたびと、「なんだか息苦しいな」と感じた瞬間に測るだけ。人差し指に挟むだけで終わります。難しい操作は何もありません。
このとき使ったのは dretec の OX-101(今は廃盤)。なぜこれを選んだのかは、後の章でお話しします。
パルスオキシメーターとは:登山で役立つこと・役立たないこと
パルスオキシメーターは、指先に光を当てて、血液中の酸素飽和度(SpO2)と脈拍を測る機器です。病院の処置室でも使われている、ごく基本的な測定器です。
登山で役立つのは、「自覚症状だけでは見えない体の状態を、数字にできる」ところ。逆に役立たないのは、高山病の診断や予防です。SpO2と高山病の症状の関係は個人差がとても大きくて、数値が低くても平気な人もいれば、数値が十分でも高山病になる人もいます。パルスオキシメーターは、診断のための機器ではありません。
使って分かった価値:数字という「判断材料」の安心感
高い山で「しんどい」と思ったとき、その「しんどさ」が普通の範囲なのか、それともまずいのか。自分の感覚だけでは、なかなか判断がつきません。初めて富士山に登る人なら、なおさらだと思います。
そこに数字があると、「79か・・ちょっと休もう」と、行動の基準が立てやすくなります。自分の感覚を、客観的な数値で補えること。これがこの道具のいちばんの価値だと感じています。もうひとつの価値は「精神的な安定」。フラフラしながら「自分はどれだけヤバいんだ」と不安になるより、数値を見て状況を把握できたほうが、冷静に動けます。
重さは20〜30gくらいのものが多くて、荷物になる感覚はほぼゼロ。電池は単4が2本で、何十回も測れます。
数値が低いとき、どうするか
大事なことを最初に書きます。症状があれば、数値に関係なく行動を止める。これが最優先です。
SpO2が低いときの基本的な対処は、こんな流れです。
- 立ち止まって休憩する:歩くのをやめて、ゆっくり深呼吸します
- 数分おいて測り直す:動いた直後や冷えた指は値がブレやすいので、何回か測って傾向を見ます
- よくならなければ、下山を考える:回復しないなら無理に進みません
- 高山病が疑われる症状があれば、すぐ下山・受診:頭痛・吐き気・歩けない・意識がはっきりしない、などは数値に関係なく下山が優先です
高山病のいちばん確実な対処は、下山です。酸素の薄い場所から離れること。これだけが確実な方法です。パルスオキシメーターは、その判断を後押しする道具であって、「数値がOKだから大丈夫」と無理を正当化するための道具ではありません。
お願い:この記事は医療アドバイスではありません。診断や治療を目的としたものではなく、登山の参考情報として読んでください。高山病が疑われるときは、数値に関係なく、すぐに下山して医師に相談してください。高山病の詳しい情報は、日本登山医学会など専門の機関の情報を確認してください。
SpO2の数値の見方:決まった数字を信じすぎない
平地では、SpO2は95%以上が正常の目安とされることが多いです(これも個人差や測り方で変わります)。
ただ、高い山では、健康な人でも標高に応じてSpO2は下がります。富士山の山頂(3,776m)では、80〜90%台になることも珍しくありません。寒さや疲れ、水分不足、測り方によっても数字は変わります。「この数字より下なら高山病」という決まったラインはありませんし、数字だけで状態を決めてしまうのは危険です。
大切なのは、「普段の自分の値と比べてどう変わったか」と、「症状とあわせて見ること」。数字を参考にしながら、自分の体の感覚も一緒に使うのが、正しい使い方だと思います。
数値がブレる条件と、使い方のコツ
パルスオキシメーターは、条件が整わないと数値が安定しません。次のことを知っておくと、変な数字が出ても慌てずに済みます。
- 指先が冷えている:血のめぐりが悪くなって、実際より低い値が出やすいです。手袋を外した直後は要注意
- 歩いた直後・動いている最中:体の揺れで値がブレます。1〜2分落ち着いてから測ります
- 手が濡れている・マニキュアをしている:光の通り方が変わって、精度が落ちます
- 風が強い・とても寒い:指先の血流が落ちて、値に影響します
1回だけ測って一喜一憂しないのが鉄則です。何回か測って、傾向を見ます。歩きながらの測定は値がブレる原因になるので、必ず立ち止まってから測ってください。
どんな人に必要か・要らないか
全員に必要、とは思っていません。自分の登り方と経験に合わせて、判断していい道具だと感じています。
| こんな人には持つ価値がある | なくても問題ない可能性が高い |
|---|---|
| 高山病になりやすい、または経験したことがある | 標高2,000m未満の低山が中心 |
| 3,000m級・富士山・アルプスに挑戦する | 自分の体調の変化のサインを十分つかんでいる |
| 高所での体調変化が不安で、数値を確認したい | 同行者がベテランで、判断を任せられる |
| 単独で登ることが多い |
Apple Watchなどウェアラブルとの違い
Apple WatchにもSpO2を測る機能がついていますが、手首で測るタイプは医療機器ではなく、精度は指で測る専用機に劣ります。手首の動きや、付け方のゆるさで値がブレやすいので、高い山でこまめに確認するなら、専用機のほうが安定しています。Apple Watchの登山での使い方は、別の記事でくわしく紹介する予定です。
選び方:医療機器認証を自分で確認する
パルスオキシメーターには、「医療機器(管理医療機器)」と「健康管理用」の2種類があります。見た目はほぼ同じですが、中身の精度の基準がまったく違います。
「医療機器」と「健康管理用」の違い
- 医療機器(管理医療機器):薬機法にもとづいて、精度や安全性の試験をクリアして承認された機器です。商品ページや本体・パッケージに、認証番号(例:304AKBZX〇〇〇〇〇〇〇〇)が書かれています
- 健康管理用:法律上の精度の基準を満たす必要がなく、あくまで参考の値として使うものです。医療の判断には使えません
認証番号を自分で確認する手順
- 商品ページの「医療機器認証番号」の欄を探します
- 本体の側面か、パッケージの裏に書かれた番号を確認します
- 「管理医療機器」「医療機器認証番号」の表記があれば本物です
なぜここを強くおすすめするかというと、コロナ禍(2020〜2021年)のときに、粗悪な「健康管理用」の製品がたくさん出回ったからです。需要が一気に増えたのに便乗した製品があふれて、何が安全なのか分かりにくい状態でした。私がOX-101を買ったのも、ちょうどその時期。正確に測りたかったので、医療機関に関わる知人にお願いして、正規品を手に入れました。コロナ禍が落ち着いた今でも、医療機器認証を確認する習慣は変わっていません。
ただ、認証品でも、指が冷えていたり体が動いていれば値はブレます。認証は「最低限の精度の基準を満たしている」という証明であって、どんな状況でも正確に測れる保証ではありません。
おすすめ:dretec OX-201 / OX-202(現行・医療機器認証品)
私が使ったOX-101は、もう廃盤です。同じdretecから、今は現行モデルが2機種出ています。私自身は使っていないので、公表されているスペックをもとにした紹介になりますが、同じメーカーで選ぶなら、医療機器認証が確認できるこの2機種が現実的な候補です。
| 項目 | OX-201 | OX-202 |
|---|---|---|
| 医療機器認証番号 | 304AKBZX00071000 | 304AKBZX00072000 |
| 画面表示 | 白色LED | フレームレスLED(上位タイプ) |
| PI(血流の状態を示す指標)測定 | あり | あり |
| 電源 | 単4電池×2本 | 単4電池×2本 |
| こんな人に | シンプルな機能で十分な人 | 画面の見やすさを重視する人 |
(※この表は公表スペックをもとにした比較です。私はOX-201・OX-202を使っていないので、使用感のレビューではありません)
登山で使うことを考えると、どちらも重さ・電源・認証の面で基準は満たしています。画面の見やすさに差があるので、見やすさを重視するならOX-202のほうが向いていると言えます。
買うときは、商品ページで認証番号を自分で確認してから選んでくださいね。(広告)
注意点とお願い
大切なこと:この記事は医療アドバイスではありません。パルスオキシメーターで測った数値は、高山病の診断や治療には使えません。高山病が疑われる症状(頭痛・吐き気・意識がはっきりしない・歩けない など)があるときは、SpO2の数値に関係なく、すぐに登山をやめて下山し、医師の診察を受けてください。高山病の一般的な情報は、日本登山医学会など専門の機関の情報を確認してください。
まとめ
パルスオキシメーターは、登山の必須装備ではありません。でも、3,000m級の山で不安がある人には、無理をしていないかを数字で確認できる、心強い判断材料になります。
富士山でSpO2が79まで落ちたとき、フラフラしながらも、数字を見て冷静に「休もう」と判断できました。あのとき持っていてよかったと、今でも思っています。
選ぶときは、必ず医療機器認証番号を自分で確認すること。そして何より、数値がよくても体調が悪ければ、行動を止める判断をいちばんに優先してください。オキシメーターは「無理をしても大丈夫」の証拠を探す道具ではなく、「無理をしていないか」を確かめる道具です。
よくある質問
パルスオキシメーターがあれば高山病を防げますか?
防げません。パルスオキシメーターはSpO2(血中酸素飽和度)を測る道具であって、高山病を診断したり予防したりする機器ではありません。SpO2と高山病の症状の関係は個人差が大きく、数値が十分でも高山病になることがあります。症状があれば、数値に関係なく下山・受診を優先してください。
SpO2が何%以下になったら下山すべきですか?
「何%以下なら下山」という決まった基準はありません。高い山では、健康な人でもSpO2は下がります。大切なのは、数値の変化の傾向と、自分の症状(頭痛・吐き気・ふらつきなど)、そして回復しているかどうかをあわせて見ることです。症状があれば、数値に関係なく下山・受診が優先です。
医療機器認証品と、そうでないものはどう違いますか?
医療機器(管理医療機器)の認証品は、薬機法にもとづいて精度や安全性の試験をクリアした製品です。健康管理用は、法律上の精度の基準がなく、参考の値として使うものです。商品ページや本体・パッケージに、認証番号(例:304AKBZX〇〇〇〇〇〇〇〇)が書かれているものを選んでください。
Apple Watchで代わりになりますか?
代わりにするのは難しいと考えています。Apple WatchのSpO2測定は、手首で測る健康管理の機能で、医療機器ではありません。精度や安定性の面で、指で測る専用のオキシメーターに劣りますし、体の動きや付け方のゆるさで値がブレやすいです。高い山でこまめに確認するなら、専用機のほうが向いています。
富士山以外の登山でも使いますか?
私が実際に使ったのは、富士山での1回です。3,000m級のアルプスや、高山病のリスクがある山に行くときに、判断材料として持っていくつもりです。2,000m未満の低山では、基本的に必要ないと感じています。
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