僕の登山靴の遍歴はこう。
- モンベル(トレールグリッパーソール)——最初の1足
- スポルティバ トランゴタワー GTX——安定感は抜群。ただしガチの山行でしか使わなくなった
- スポルティバ エクイリビウム——溝が深くて土で滑りにくそうだったから
- スポルティバ TX4 GTX + TX5 Low GTX——現在。基本ローカット2足の使い分け




見てわかる通り、スポルティバに出会ってからずっとスポルティバ。でもハイカットからローカットに変えたのが一番大きな転換点だった。
軽さは正義。デメリットを上回るメリットがある。
トランゴタワーもエクイリビウムも良い靴だった。でも少し重い。1日歩くと足が疲れる。百名山を登り続ける中で「軽い靴の方がトータルで安全」という結論にたどり着いた。
今は行く山によって靴をセレクトするスタイル。岩場にはTX4 GTX、低山にはTX5 Low GTX。その日の山に最適な1足を選ぶ。
この記事では「なぜTX4 GTXを岩場専用機として選んだのか」を本音でレビューする。「ローカットに変えたいけど不安…」と悩んでいる人に読んでほしい。
この記事でわかること
- TX4の特徴とスペック
- 実際に山で使って感じたメリット・デメリット
- サイズ選びのコツ
- TX4が向いている人・向いていない人
- TX5との違い
スポルティバ TX4とは?
イタリアの登山靴メーカー「La Sportiva(ラ・スポルティバ)」のアプローチシューズ。
クライマーが岩場の取り付きまで歩くために設計された靴だけど、その性能の高さから登山・ハイキングで愛用する人が急増している。
| 項目 | スペック |
|---|---|
| メーカー | La Sportiva(イタリア) |
| カテゴリー | アプローチシューズ |
| カット | ローカット |
| ソール | Vibram Mega Grip |
| アッパー | スエードレザー + GORE-TEX |
| 重量 | 約400g(片足) |
| 防水 | あり(GORE-TEX) |
| 価格帯 | 約25,000〜29,000円 |
ハイカットから乗り換えて感じた6つのメリット
1. 岩場のグリップ力が圧倒的
これがTX4最大の武器。Vibram Mega Gripソールの粘り気がすごい。
濡れた岩でも「ピタッ」と止まる感覚。普通のトレッキングシューズとは次元が違う。

白馬岳の山小屋で、同じTX4を履いている人に出会った。聞けば、これから不帰ノ嶮(かえらずのキレット)を通過するという。北アルプス屈指の難所を、ローカットのTX4で。「これで十分ですよ」と笑っていた。——わかる。今ならそう思う。
2. つま先の剛性(クライミングゾーン)
つま先部分にクライミングゾーンがあって、岩の小さなエッジにも立てる。
これはトレッキングシューズにはない機能。鎖場や岩場で「つま先で乗る」動きが安定する。
3. スエードレザーの耐久性
合成素材のシューズと違って、スエードレザーは使い込むほど足に馴染む。
ただし正直に言うと、登山靴は大体2年でダメになる。これはTX4に限らずどの靴でも同じ。今はTX4 GTXの2足目。1足目は約2〜3年で限界になった。トランゴタワーも1回ソールを張り替えている。
消耗品と割り切って、ソールが減ったら買い替える。安全に関わる部分だからケチらない方がいい。
4. フィット感の調整がしやすい
シューレース(紐)が足の甲全体をカバーする設計で、締め具合を細かく調整できる。
足幅が広い人も、紐の締め方で対応しやすい。
5. とにかく軽い——ハイカットを捨てた最大の理由
片足約380g。ハイカットの登山靴(700〜900g)と比べると半分以下。
これがローカットに乗り換えた最大の理由。百名山を登り続ける中で「重い靴で足が疲れる→集中力が落ちる→下山時つまずく」という悪循環を何度も経験した。軽い靴は足さばきが良く、岩場での細かいステップもスムーズ。疲労が少ないから判断力も続く。
軽さは快適性じゃない。安全性の話。 これは100座登って確信したこと。
6. 山小屋での脱ぎ履きが圧倒的にラク
地味だけどめちゃくちゃデカいメリット。
ハイカットの登山靴、山小屋の玄関で脱ぐの大変じゃない? 紐をゆるめて、フック外して、足首のホールドをほどいて……。混雑した山小屋の狭い玄関で、後ろに人が並んでいる中でこれをやるストレス。
TX4はローカットだからスポッと脱げる。スポッと履ける。圧倒的に早い。 ハイカット時代と比べたら次元が違う。テント場でトイレに行くときも、山小屋に入るときも、この手軽さは想像以上にストレス軽減となりありがたい。
正直に言う。気になるところ3つ
1. くるぶしのガードがない——唯一の不安
ローカットの宿命。くるぶしがむき出しだから、岩にぶつけたりガレ場で石が当たると痛い。殆ど無いが。
そしてハイカットのガチの登山靴に比べると、どうしても剛性は落ちる。足首まわりの固定力、ソール全体の剛性感、重荷を背負ったときの安定感。ここはハイカットに軍配が上がる。これは認めざるを得ない。もちろんトランゴタワー並に硬いソールのローカットモデルが出たら買ってしまうと思う。
ただ、それでもハイカットメインに戻そうとは思わない。軽さと脱ぎ履きの速さが、剛性の差を上回る。 これは実際に両方使い比べて出した結論。足首の捻挫リスクもゼロじゃないけど、捻挫はしたことは今まで無い。ハイカットでも捻挫する時はする。軽い靴で足さばきを良くした方が、トータルの安全性は高いと思う。
2. GORE-TEXの弱点——水が入ったら乾かない
GORE-TEXのデメリットといえば「ムレ」がよく挙がる。たしかに夏場はムレる気もする。
でも個人的にはそれより厄介なのが、一度水が侵入したら乾きにくいこと。
GORE-TEXは防水膜で水の侵入を防いでくれるけど、裏を返せばその膜が「中に入った水を外に逃がしにくい」。ローカットだから、くるぶし上から水が入ることがある。沢沿いのルートで誤って深い水たまりを踏んだり、滑って川にドボンしたり、今までそれは無いが。
そうなると非GORE-TEXの靴より乾きが遅い。泊まりの山行で靴が乾かないのはけっこうキツい。
対策は単純で、水が入る状況を避けること。ローカット+GORE-TEXの組み合わせは「浅い水濡れは完璧に防ぐけど、くるぶし超えの水没には弱い」。これを理解して使えば問題ない。
ちなみに至仏山で残雪期に履いたことがある。ゲーターを付けて雪の中を歩いたけど、GORE-TEXのおかげで浸水はしなかった。——ただし、雪山でローカットはおすすめしない。 あくまで「たまたま残雪があった」ケースで乗り切れただけ。真似しないでほしい。
3. ソールの減りが早め
グリップ力と引き換えに、ソールは柔らかめの配合。舗装路を長く歩くと減りが早い。
ただしここが面白いところで、TX4のソールはローカットシューズの中ではかなり硬い部類。トレランシューズやライトハイキングシューズと比べると剛性が高く、岩場でのエッジングがしっかり効く。「ローカットなのにソールが硬い」——これがTX4の隠れた強み。アプローチシューズとしての設計がここに出ている。
サイズ選びのコツ
サイズ選びは使う靴下で変わる。ここが一番大事。
目安は普段のスニーカーから+0.5〜1cm。
- 薄手のソックスなら+0.5cm
- 登山用の厚手ソックスなら+1cm
- スポルティバは全体的にやや細身なので、日本人の足(幅広・甲高)はジャストだとキツい
- 可能なら実店舗で、実際に山で使う靴下を履いて試着がベスト
あと、意外と知られていないけど——スポルティバはメンズもレディースも足の形が同じ。色やデザインが違うだけで、足型は一緒。だからサイズが合えばレディースモデルも普通に履ける。エクイリビウムはウーマンモデル(ハイビスカスカラー)を履いていた。「メンズにない色が欲しい」「小さいサイズが欲しい」という人は、レディースも選択肢に入れていい。
スポルティバ サイズ変換表
スポルティバはEUサイズ表記。日本のcmとの対応はこう。
| EU | cm(目安) |
|---|---|
| 38 | 24.0 |
| 39 | 24.5 |
| 40 | 25.0 |
| 41 | 25.5-26.0 |
| 42 | 26.5 |
| 43 | 27.0-27.5 |
| 44 | 28.0 |
| 45 | 28.5-29.0 |
サイズはEU42(約26.5cm)。靴下はDarn Tough(ダーンタフ)一択。これと合わせてちょうどいい。最初は少しタイトに感じたけど、スエードが馴染んで1週間くらいでピッタリになった。
靴下はDarn Tough一択
靴のレビュー記事で靴下の話をするのは変かもしれないけど、足元のフィット感は靴と靴下のセットで決まる。だから書く。
使っているのはDarn Tough(ダーンタフ)。山のマークが入っているアメリカのメリノウール靴下。3,000〜4,000円くらい。ハイカットとローカットの丈がある。
まず、長距離になると足の疲れが全然違う。これが一番デカい。
TX4 GTXはソールが硬い。岩場でのエッジングには最高だけど、その分足裏への衝撃がダイレクトに来る。だからこそ靴下がクッションの役割を果たす。厚手のメリノウールがソールの硬さを吸収してくれるから、8時間以上歩いたあとの足裏のダメージが明らかに少ない。トランゴタワーを履いていた時は、TX4よりソールが硬いのでその違いはかなり感じた。
黒部五郎小屋で、夏なのに冬用の厚手ソックスを履いているガイドさんを見かけたことがある。たぶん理由はこれ。プロほどソールの硬さと靴下の関係を理解している。
新品のときのふかふか感がすごくて、インソール(YAMAP BMZカーボン)とダブルで効く。膝への負担もさらに減る。
ただし靴と同じで消耗品。2〜3年で買い替えを推奨。使い込むとふかふか感がなくなって、ただの靴下になる。もちろん普通の靴下と比べるとクッション性はあるが、新品との差は歴然。毛羽立ちやすいので洗濯はネット洗いが鉄則。それだけで寿命が延びる。
使わなくなったダーンタフは冬の家用靴下として、一緒に登った相棒として第二の人生を送らせている。メリノウールだから家の中でもあったかい。捨てるのはもったいない。
TX4が向いている人・向いていない人
✅ 向いている人
- 岩場・鎖場が多いルートをよく歩く
- 軽さを最優先にしたい
- 足首の筋力に自信がある
- 日帰り登山がメイン
- 用途別に靴を使い分ける派
❌ 向いていない人
- 登山初心者(まずはミドルカットから)
- 重いザック(テント泊装備20kg以上)を背負うことが多い
- 雪山に使いたい人(ローカットは雪山非対応)
- 足首に不安がある
TX4 vs TX5 ローカット|どっちがいい?
迷う人が多いこの2つ。簡単に整理すると——
| 比較項目 | TX4 GTX | TX5 Low GTX |
|---|---|---|
| コンセプト | アプローチシューズ | ハイキングシューズ |
| ソール | Vibram Mega Grip | Vibram Mega Grip |
| グリップ力 | ◎(岩場特化) | ○(バランス型) |
| ソール剛性 | ◎(硬め=エッジング◎) | ○(やや柔らかい=歩行◎) |
| 防水 | GORE-TEX | GORE-TEX |
| 足首サポート | なし | なし(ローカット) |
| 歩きやすさ(長距離) | ○ | ◎ |
| 価格帯 | 約25,000〜29,000円 | 約26,000〜30,000円 |
使い分けはこう:
- 本格的な岩場・岩稜帯(槍ヶ岳、剱岳、白馬岳など) → TX4 GTX
- それ以外ぜんぶ → TX5 Low GTX
実は出番が多いのはTX5 Low。アルプスの岩稜帯以外なら全部TX5 Lowで行く。TX4 GTXは岩場の切り札。どちらもGORE-TEXだから、天気は気にせず「本格的な岩場かどうか」だけで選ぶ。シンプル。(※雪山は別。ローカットで雪山は論外なので、冬靴を使う)
よくある質問(TX4 Q&A)
Q. TX4 GTXで北アルプスは歩ける?
歩ける。白馬岳や最後の劔岳でも使った。100名山最後の方はほぼTX4一択。白馬岳の山小屋で会った人は、たまたま同じTX4を履いていた。珍しかったのか直ぐに靴の話で盛り上がった。そして、その方は不帰ノ嶮に向かっていた。日帰りや小屋泊なら問題なし。ただし重いテント泊装備だと足首のサポートが気になるなら他の検討もあり。
Q. TX4 GTXで雪山は歩ける?
おすすめしない。至仏山の残雪期にゲーターを付けて歩いたことがあるけど、あくまで「たまたま残雪があった」ケース。GORE-TEXのおかげで浸水はしなかったけど、雪山前提の靴じゃない。雪山は素直に冬靴を。
Q. TX4 GTXのインソールは変えた方がいい?
純正から YAMAP別注「山を歩くインソール カーボン」(BMZ製)に変えた。YAMAPインソールの最上位モデルで、カーボン素材の反発力が足への負担を軽減してくれる。
正直に言うと、これに変えてから膝の痛みがなくなった。剱岳でもTX4 GTX+このインソールで歩いたけど、下山後の膝のダメージが明らかに減った。
ただし、これは個人差があると思う。個人的には劇的に効いたけど、全員に同じ効果があるとは言えない。約16,000円と安くはないけど、膝痛に悩んでいる人は試す価値はある。
あと、膝つながりでもうひとつ。ワコール CW-X ジェネレーターモデル(最上位モデル)のスパッツもおすすめ。テーピングの原理で膝と股関節をサポートしてくれるタイツで、着地時の衝撃から膝を守ってくれる。
インソールで足裏から、CW-Xで膝まわりから。この2つの組み合わせで、膝痛から解放された。決して安くはないけど(CW-Xの最上位モデルは2万円前後)、膝をやってしまったら山に行けなくなる。予防に金をかける方が絶対にいい。
Q. ソールの張り替え(リソール)はどう?
正直おすすめしない。トランゴタワーで一度リソールしたけど、ソールは新しくなってもアッパーやミッドソールなど周りが傷んでいるから、結局そのうちダメになる。2〜3年使い倒して買い替える方がトータルで安全だし、安上がりになるかもしれない。
まとめ
TX4 GTXは「岩場特化のローカット + GORE-TEX防水」という、かなり尖った性能の靴。
万人向けではない。でも、岩稜帯を軽快に歩きたい人にとっては最高の相棒。
百名山100座を通じて「軽さは正義」という結論にたどり着いた。TX4 GTXで岩場、TX5 Low GTXで低山や岩場の少ない山。行く山に合わせて1足をセレクトする。重い登山靴1足で全部カバーするより、圧倒的に快適。
ただし、初心者はまずミドルカットの登山靴で経験を積んでから。軽さの恩恵を受けるには、足首の筋力と歩き方の基礎が必要。もちろん足捌きの練習も大事。
ちなみに、TX4にはミドルカットモデル(TX4 Mid GTX)もある。ローカットに抵抗がある人は、まずミドルカットから入るのもアリ。足首のサポートがありつつ、TX4のグリップ力はそのまま。ハイカットほど重くないし、ローカットへのステップとしてちょうどいい選択肢。
では、またどこかのお山で👋


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