鈴鹿山脈、三重・滋賀の県境に連なる個性豊かな7座が「鈴鹿セブンマウンテン」。1978年に近畿日本鉄道(近鉄)が登山振興のために選定したルートで、入道ヶ岳・御在所岳・鎌ヶ岳・雨乞岳・釈迦ヶ岳・藤原岳・竜ヶ岳の7座から構成されている。
百名山完登を目指す準備段階として、名古屋・大阪の両拠点から日帰りできる鈴鹿に通い込んだ。2019年11月から2020年4月にかけて全7座を制覇。難易度・実際のコースタイム・初心者向けの攻略順まで、実際に登った視点でまとめた記録を残しておく。
この記事でわかること
- 鈴鹿セブンマウンテン7座の標高・難易度・実際のコースタイム一覧
- 初心者から上級者までの攻略順の考え方
- 各座の特徴と登山記録(著者の実体験ベース)
- ベストシーズン・必須装備・アクセス情報
- 番外:鈴鹿最高峰・御池岳(テーブルランド)の紹介
鈴鹿セブンマウンテンとは
鈴鹿セブンマウンテンは、1978年に近畿日本鉄道(近鉄)が「近鉄沿線から日帰りで登れる個性豊かな7座」として選定した山の集合体。百名山・二百名山のような格付けとは別軸で、関西・東海の登山者の間では独自のステータスとして定着している。
注意が必要なのは「鈴鹿セブン」の構成。鈴鹿最高峰の御池岳(1,247m)を含める場合があるが、近鉄の正規選定では藤原岳が7座目に含まれており、御池岳はセブンには入っていない。本記事では正規の7座で構成し、御池岳は「+1の番外」として別途紹介する。
鈴鹿セブンを意識し始めたのは、まだ百名山を本格的に意識していないころだった。日帰りで行ける山域として鈴鹿山脈に通ううち、気がつくと7座すべてに足を踏み入れていた。振り返ると、岩場・笹ヤブ・石灰岩の山・広大な台地と、7座が全部違う顔を持っていて、百名山に負けない多様性があった。
登山データ一覧(7座まとめ)
以下は著者の実測データ。コースタイムは個人差があるため、参考程度に
| 山名 | 標高 | 距離 | 累積標高 | 実際の行動時間 | 登山日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 入道ヶ岳 | 906m | 7.5km | 810m | 6時間56分 | 2019/11/17 |
| 御在所岳 | 1,212m | 5.7km | 787m | 6時間28分 | 2019/11/30 |
| 藤原岳 | 1,140m | 8.1km | 1,082m | 6時間23分 | 2019/12/7 |
| 釈迦ヶ岳 | 1,092m | 6.0km | 754m | 6時間30分 | 2019/12/21 |
| 竜ヶ岳 | 1,099m | 11.0km | 1,176m | 8時間13分 | 2019/12/28 |
| 鎌ヶ岳 | 1,161m | 5.8km | 862m | 5時間13分 | 2020/2/5 |
| 雨乞岳 | 1,238m | 8.3km | 846m | 6時間41分 | 2020/4/4 |
難易度ランキング
百名山完登済みのレベル感で評価。体力・技術・道迷いリスクの3軸で分けると以下のようになる。
| レベル | 山名 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 入門 | 入道ヶ岳・藤原岳 | 整備された登山道。入道ヶ岳は最低標高、藤原岳は大貝戸コースが明瞭で歩きやすい |
| 初級 | 御在所岳・竜ヶ岳 | 御在所岳は中登山道に岩場あり。竜ヶ岳は距離11kmと長めだが稜線歩きが気持ちいい |
| 中級 | 釈迦ヶ岳 | 猫岳経由ルートに岩場あり。山頂直下は集中力が必要 |
| 上級 | 雨乞岳・鎌ヶ岳 | 雨乞岳は後半の笹ヤブ漕ぎと道迷いリスク。鎌ヶ岳は鋭鋒・鎖場・脆い岩が三重苦 |
一番手こずったのは鎌ヶ岳。「鈴鹿の槍ヶ岳」という呼び名は伊達ではなく、冬の稜線は緊張感が段違いだった。雨乞岳は体力的にはそこまで重くないが、笹ヤブの不明瞭なルートで方向感覚がおかしくなりやすいのが曲者
初心者へのおすすめ攻略順
攻略順に決まりはないが、体力・技術を段階的に上げていくなら以下の順番がおすすめ。
ステップ1:まず登るならこの2座
入道ヶ岳(906m)か藤原岳(1,140m)から入るのがいい。入道ヶ岳は椿大神社から登る北尾根コースで、参拝と登山が組み合わさる独特の雰囲気がある。藤原岳は大貝戸コースが明瞭で迷いにくく、春の福寿草の時期に多くの登山者が訪れる。
- 入道ヶ岳(標高最低・椿大神社参拝ルート・伊勢湾の眺め)
- 藤原岳(大貝戸コース・整備済み・春は福寿草の名山)
ステップ2:鈴鹿の地形に慣れる3座
鈴鹿の岩場・稜線に慣れてきたら、御在所岳・釈迦ヶ岳・竜ヶ岳へ。御在所岳は中登山道の岩場が楽しく、ロープウェイで下山すれば体力調整もできる。竜ヶ岳は距離11kmと長めだが、稜線の白い笹原の景色が開放的。
- 御在所岳(岩場入門・ロープウェイ下山も可・展望抜群)
- 竜ヶ岳(宇賀渓から・白い羊の笹原・稜線歩きが気持ちいい)
- 釈迦ヶ岳(朝明渓谷から・猫岳経由・岩稜が核心)
ステップ3:最後に上級2座
鎌ヶ岳と雨乞岳は後回しにするのが賢い。鎌ヶ岳は岩場・鎖場・脆い岩が揃う上級者向けで、冬季はアイスバーンで難易度がさらに上がる。雨乞岳は体力難易度は中程度だが、後半の笹ヤブで道迷いしやすく、経験値のある段階で行くべき山。
- 雨乞岳(武平峠から・笹ヤブ覚悟・最高峰1,238m)
- 鎌ヶ岳(宮妻峡カズラ谷から・鋭鋒・鎌ヶ岳が7座の締め括りにふさわしい)
各座の登山記録
入道ヶ岳(906m)
鈴鹿セブンの最南端・最低標高の山。椿大神社の境内を抜けて北尾根コースに入ると、登山と参拝が一体になった独特の雰囲気がある。山頂は伊勢湾に向かって開けており、906mとは思えない開放感があった。鈴鹿セブンの中で最も「気軽に登れる山」として最初の1座にふさわしい。
ルート:北尾根→二本松尾根周回(椿大神社)/距離7.5km・累積810m・行動時間6時間56分
御在所岳(1,212m)
鈴鹿セブンの顔とも言える存在で、二百名山にも選定されている。中登山道は奇岩・大岩が次々と現れる岩場ルートで、飽きることなく山頂へ。11月末に登った際は山頂周辺がアイスバーンで、霜柱の結晶が朝日に輝いていた。山頂から伊勢湾越しに見えた富士山は、百名山で見てきたどのアングルとも違う遠望で、思わず声が出た。
ルート:中登山道→一ノ谷新道下山/距離5.7km・累積787m・行動時間6時間28分
藤原岳(1,140m)
鈴鹿セブン7座目(正規メンバー)。石灰岩の山で知られ、春の福寿草の群生で全国的に有名な山。大貝戸登山口から往復する大貝戸コースは、登山道が整備されて歩きやすく、初心者でも取り組みやすい。累積標高差1,082mとセブン上位クラスのボリュームがあるが、道が明瞭なので迷うリスクは低い。12月に登った際は山頂付近で雪と泥のぐちゃぐちゃ道に苦戦し、福寿草の春の名所も冬は別の顔を見せていた。
ルート:大貝戸コース往復/距離8.1km・累積1,082m・行動時間6時間23分
釈迦ヶ岳(1,092m)
朝明渓谷をベースに、猫岳経由で山頂を踏むルートを選んだ。山頂直下の岩稜帯は距離こそ短いが集中力が必要で、登山靴のグリップと三点支持が試される場面が続く。霧氷がついた稜線の景色は写真で見るより実物の方がずっと美しく、岩場好きには特に向いている山だと思う。鎌ヶ岳と並んで、鈴鹿の中で技術的な達成感がある2座のうちの1座。
ルート:朝明渓谷→猫岳→釈迦ヶ岳ピストン/距離6.0km・累積754m・行動時間6時間30分
竜ヶ岳(1,099m)
宇賀渓から中道→重ね岩→石榑峠→砂山を周回する欲張りルートで歩いた。ホッチキス岩・重ね岩と奇岩が次々と現れ、稜線に出ると白い羊が並んでいるような笹原が広がる。御在所岳・鎌ヶ岳・雨乞岳が指呼の間に見えて、稜線の開放感は7座の中でも随一。距離11km・累積1,176mとセブン屈指のロングルートで、奇岩巡りと笹原の稜線歩きを長く楽しめる。
ルート:宇賀渓→中道→重ね岩→石榑峠→砂山周回/距離11.0km・累積1,176m・行動時間8時間13分
鎌ヶ岳(1,161m)
「鈴鹿の槍ヶ岳」という異名は、山容を見た瞬間に納得できる。宮妻峡のカズラ谷ルートから沢沿いを詰めて稜線に出た瞬間の眺望は、7座の中でも特に記憶に残っている。山頂の細い稜線は晴天でも緊張感があり、2020年2月の登山ではチェーンアイゼンが本当に役に立った。岩場と急斜面が連続するため、足の置き場と手の支点を慎重に選ぶ必要があり、初心者には難しい山。
ルート:宮妻峡カズラ谷ピストン/距離5.8km・累積862m・行動時間5時間13分
雨乞岳(1,238m)
鈴鹿セブン最高峰(1,238m)にして、7座の制覇を締め括った山。武平峠から茨谷登山口に入り、沢沿いのルートを詰めていく。登りは変化があって飽きないが、東雨乞岳から雨乞岳山頂にかけての笹ヤブ区間が予想以上にきつかった。踏み跡が不明瞭になる区間があり、地図確認を怠ると簡単に迷える。川を渡るポイントで足を滑らせて川に落ち、靴ごと濡れたのも今となっては笑い話。
ルート:武平峠周回(茨谷登山口)/距離8.3km・累積846m・行動時間6時間41分
+1:鈴鹿最高峰・御池岳(1,247m)
鈴鹿セブンの正規メンバーではないが、鈴鹿最高峰として別格扱いで紹介しておきたい山。山頂一帯は「テーブルランド」と呼ばれる広大なカルスト台地で、ドリーネ(溶け穴)が点在する不思議な地形が広がる。樹林帯の急登を抜けると突然フラットな別世界に出る感覚で、苔の森や春の福寿草も大きな見どころ。同じ鈴鹿山脈でも、セブン7座とは全く異なる世界観で、一度足を踏み入れると忘れられない。
ただし要注意なのがルートの複雑さ。テーブルランドは広大で平坦な分、ルートが不明瞭な箇所が多く道迷いリスクが高い(GPS必須)。さらに足元にはカルスト地形特有のドリーネ(溶け穴)が点在し、踏み込み事故にも注意が必要。霧や降雪時は経験者同行をすすめる。鈴北岳・鈴ヶ岳と縦走してテーブルランドを一周するルートで歩いたが、行動時間7時間33分・距離12.8kmのボリュームは鈴鹿最高難度クラスだった。
ルート:鞍掛トンネル東登山口→鈴北岳→鈴ヶ岳→御池岳→テーブルランド周回→コグルミ谷登山口/距離12.8km・累積1,175m・行動時間7時間33分
ベストシーズン
鈴鹿山脈は年間を通じて登れる山域だが、シーズンによって表情が大きく変わる。自分の目的に合わせて時期を選ぶといい。
| 時期 | 特徴 | おすすめ山 |
|---|---|---|
| 3〜5月 | 新緑。藤原岳の福寿草・カタクリが見頃。コースタイム通りに歩きやすい | 藤原岳(福寿草)・入道ヶ岳(アカヤシオ) |
| 6〜8月 | 暑い。早朝スタート推奨。沢沿いルートは比較的涼しい | 雨乞岳(沢ルート)・竜ヶ岳 |
| 9〜11月 | 紅葉シーズン。御在所岳・釈迦ヶ岳が特に美しい | 釈迦ヶ岳・御在所岳・竜ヶ岳 |
| 12〜2月 | 霧氷・積雪。チェーンアイゼン以上が必要な場面も多い | 釈迦ヶ岳(霧氷)・入道ヶ岳(積雪少なめ) |
一番おすすめは10月下旬〜11月上旬の紅葉シーズン。御在所岳の中登山道は岩場と紅葉が組み合わさって最高で、釈迦ヶ岳の霧氷が出始める11月は稜線が白と赤に染まる。3月〜4月の藤原岳の福寿草は人気が高く、週末は登山口が混雑するほど
アクセス・拠点情報
名古屋・大阪からのアクセス
鈴鹿セブンは近鉄湯の山線の「湯の山温泉駅」が御在所岳・鎌ヶ岳・雨乞岳のベースになる。電車でのアクセスは近鉄名古屋駅から特急で約1時間(近鉄四日市乗換)。大阪方面からは近鉄難波駅から特急で約2時間。
車の場合は東名阪自動車道「四日市IC」または「菰野IC」が最寄り。各山の登山口には駐車場が整備されているが、早朝に埋まることも多いので7時前到着を目安にするといい。
| 山名 | 最寄り登山口 | アクセス目安(名古屋から) |
|---|---|---|
| 入道ヶ岳 | 椿大神社 | 車:菰野ICから約20分 |
| 御在所岳 | 中登山道駐車場 | 車:湯の山温泉から約10分 |
| 藤原岳 | 大貝戸登山口 | 車:藤原町から約10分 / 近鉄西藤原駅から徒歩20分 |
| 釈迦ヶ岳 | 朝明渓谷 | 車:菰野ICから約20分 |
| 竜ヶ岳 | 宇賀渓 | 車:三岐鉄道三岐線「伊勢治田駅」から約20分 |
| 鎌ヶ岳 | 宮妻峡 | 車:四日市ICから約30分 |
| 雨乞岳 | 武平峠東駐車場 | 車:湯の山温泉から約20分 |
下山後の温泉・拠点
御在所岳・鎌ヶ岳・雨乞岳の下山後は、湯の山温泉が定番の温泉地。三重県菰野町にあり、ホテル・旅館・日帰り入浴施設が揃っている。鈴鹿の岩場と笹ヤブで疲れた体を流してから帰るのが、鈴鹿セブン攻略の標準コース。
必須装備チェックリスト
- 登山靴(ソール硬め):鎌ヶ岳・釈迦ヶ岳の岩場はスニーカーNG。ミドルカット以上のトレッキングシューズ推奨
- チェーンアイゼン:12月〜2月に登るなら必携。鎌ヶ岳・御在所岳・釈迦ヶ岳は冬季に凍結する。鎌ヶ岳の冬はチェーンアイゼンで初活躍だった
- 雨具・防風:稜線は風が強くなる場面が多い。レインウェアは必携
- 水分(1.5L以上):コース上に補給ポイントが少ない山が多い。特に夏季は多めに
- 地図・ナビアプリ:雨乞岳・御池岳は道迷いリスクが高い。YAMAPなどのGPSアプリ必須
- 熊鈴・熊スプレー:鈴鹿山脈はツキノワグマの生息域。特に春〜秋の早朝は注意
- 登山保険:雨乞岳・御池岳のように道迷いリスクのある山が含まれる。年間数千円〜の登山保険への加入をすすめる
よくある質問
Q1. 鈴鹿セブンマウンテンに藤原岳は含まれますか?御池岳は?
近鉄が選定した正規の鈴鹿セブンマウンテンには藤原岳が含まれ、御池岳は含まれません。御池岳を誤って7座目に加えている情報も一部見られるので注意。本記事では正規の7座(入道ヶ岳・御在所岳・鎌ヶ岳・雨乞岳・釈迦ヶ岳・藤原岳・竜ヶ岳)で構成し、御池岳は最高峰として番外紹介しています。
Q2. 鈴鹿セブンマウンテンは初心者でも登れますか?
入道ヶ岳(906m)と藤原岳(大貝戸コース)は登山道が整備されており、入門者でも挑戦できます。一方、鎌ヶ岳・釈迦ヶ岳は鎖場・岩場が多く、登山靴と基本的な岩場経験が必要。まず入道ヶ岳か藤原岳から始めて鈴鹿の地形に慣れてから上を目指すのをおすすめします。
Q3. 鈴鹿セブンマウンテン制覇の認定証はもらえますか?
各山の山頂にある近鉄の登頂証明スタンプを7座分集めると、近鉄の窓口で制覇認定証が発行されます。スタンプ台の設置状況・受付窓口は変わることがあるため、事前に近鉄の公式情報を確認してください。
Q4. 鈴鹿セブンの中で最も難しい山はどれですか?
実感では鎌ヶ岳が最難関。「鈴鹿の槍ヶ岳」と呼ばれる鋭鋒で、山頂直下の急斜面と稜線の細さ・岩の脆さが組み合わさります。冬季は凍結リスクもあり、チェーンアイゼン以上が必要になる場面も。雨乞岳は体力難易度は中程度ですが、後半の笹ヤブで道迷いしやすく、こちらも初心者向けとは言えません。
Q5. 鈴鹿セブン全座を制覇するにはどれくらいかかりますか?
1日1座のペースなら最短7日。週末に1〜2座ずつ登れば2〜3ヶ月で完了できます。百名山の合間に通った結果、制覇まで約5ヶ月(2019年11月〜2020年4月)かかりました。
まとめ
鈴鹿セブンマウンテンは、日帰りで完結する山域の中では完成度の高いラインナップだと思っている。御在所岳の岩場・鎌ヶ岳の鋭鋒・雨乞岳の笹ヤブ・藤原岳の石灰岩と福寿草・竜ヶ岳の白い笹原と、7座が全部違う顔を持っている。百名山の体力づくりの場としても、完登後のホームグラウンドとしても、長く通える山域だ。
ひとつ注意しておくと、鈴鹿セブンの「7座目」について混乱している情報が多い。正しくは藤原岳が正規メンバー、御池岳はセブン外。御池岳は鈴鹿最高峰として単独で価値がある山なので、セブン制覇後に「+1」として登りに行く価値は十分ある。
各座の詳しい登山記録は上のリンクから。7座それぞれの個性と面白さを感じてもらえたら嬉しい。









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